知床の動物【海に棲息するほ乳類】

海に棲息するほ乳類

ネズミイルカ
英名Harbor porpoise or Common porpoise
学名Phocoena phocoena
アイヌ語名タンヌ、タンヌップ(= イルカ全般)
体長1.5~1.6 m
体重45~55 kg (最大 90 kg)

北半球の寒冷な海に広く分布する、目立たない小型のイルカです。
静かに泳ぎ、水しぶきをあげることもあまりありません。
羅臼沿岸には一年中生息していますが、特に目撃頻度が高くなるのは秋です。

ツチクジラ
英名Baird’s beaked whale
学名Berardius bairdii
アイヌ語名フンペ (= クジラ全般)
体長12~13 m
体重約12 t

長いクチバシが特徴的なクジラ。
歯鯨類ではマッコウクジラに次いで2番目に大きくなる種で、5~20頭の密集した群れを作ります。
北太平洋、日本海、オホーツク海、ベーリング海の深い海域に生息しており、深海の底の方にすむイカ、魚、甲殻類などを食べています。
羅臼沖にはほぼ一年中生息していますが、観察するなら3~4 月または9月が出会える可能性が高くておすすめです。
時々、全身を海面上に出してジャンプする行動をとることがあり、なかなかの迫力です。

クラカケアザラシ
英名Ribbon seal
学名Histriophoca fasciata
アイヌ語名ルヲヲ?、トカリ、トッカリ(= アザラシ類全般)
ウイルタ語名アラハ
体長約150 cm
体重約130 kg

独特の帯状模様が美しいアザラシ。
オホーツク海、ベーリング海、チュコト海などに分布し、4月上旬頃に、ゴマフアザラシと同じく流氷上で白い産毛 (ホワイトコート) の子を産みます。
羅臼では3月になると、沖合の深いところの流氷帯でよく見かけるようになります。
岸近くの流氷に上がることはまずないため、通常は観光船に乗らないと出会えないアザラシです。
なお繁殖期以外は、広い沖合で単独洋上生活を送っており、クジラと違って体が小さいため発見が困難になります。
したがって夏の生態はよくわかっていません。

ゴマフアザラシ
英名Spotted seal / Larga seal
学名Phoca largha
アイヌ語名ホキリ?、トカリ、トッカリ(= アザラシ類全般)
ウイルタ語名バオイ
体長150~170 cm
体重110~180 kg(オスの方が大きい)

旭山動物園をはじめ全国の動物園・水族館で飼育され、日本人に最もなじみ深いアザラシです。
野生個体は日本海北部、オホーツク海、ベーリング海、チュコト海などに分布しています。国内では冬に北海道沿岸各地で見られますが、一部は道東の野付湾 (尾岱沼) などに、真夏でも残留しています。
まれに本州方面に迷い込むこともあり、千葉県鴨川の「カモちゃん」はゴマフアザラシです。
3月下旬に流氷の上で出産し、新生子は白い産毛に包まれています。
羅臼では12月頃から沿岸や漁港内で少数が観察され始め、流氷が来ると氷の上にたくさん上陸している姿を見ることができます。
なお、羅臼と根室海峡をはさんだ対岸にあるクナシリ島 (北方領土) には、ゴマフアザラシが夏を過ごす上陸場がいくつもあります。

トド
英名Steller sea lion
学名Eumetopias jubatus
アイヌ語名エタシペ「いびきをかく者」
体長230~300 cm
体重240~1,000 kg (オスの方が巨大)

アシカの仲間に属し、現存するアシカ類14種中では最大です。
北太平洋とその周辺 (オホーツク海、ベーリング海など) の沿岸海域に生息しており、魚やイカ、タコなどを幅広く食べます。
繁殖期は6 – 8月。無人島などで出産・育子・交尾をしますが、日本には繁殖場はありません。日本へは北海道と青森県の一部に、ロシアうまれ集団の一部が越冬のために南下してきます。
知床半島では、斜里町側 (ウトロ側) よりも羅臼町側へ圧倒的多数のトドがやってきます。なお、羅臼に来るトドの群れ構成は、妊娠したメスの割合が大きいことが特徴です。
12~1月には羅臼沿岸でたくさんのトドを海岸から観察することができますが、例年2月頃に流氷が来ると大部分は移動してしまい、残った少数個体も沖合へ出てしまうため、観察は難しくなります。

イシイルカ
英名Dall’s porpoise
学名Phocoenoides dalli
アイヌ語名タンヌ、タンヌップ(= イルカ全般)
体長2.2~2.4 m
体重最大約200 kg

北太平洋、日本海、オホーツク海、ベーリング海に分布する寒冷性のイルカ。
白黒のツートンカラーで、泳ぐときの最高速度は時速55 km に達します。
高速で泳ぐと海面に特徴的な逆円錐形の水しぶきがあがるため、イシイルカがいることがわかります。
羅臼沖では春~秋に観察されます。もし夏休みに観光船に乗ったなら、まず最初に出会うのはイシイルカかもしれません。

ミンククジラ
英名Common Minke Whale
学名Balaenoptera acutorostrata
アイヌ語名フンペ(= クジラ全般)
体長7.5~8m、 新生子 2.4~2.8m
体重5~6t

胸びれ上面の白い帯状模様が特徴の、小型のヒゲクジラ (髭鯨) 。
歯は無く、代わりに皮フから変化したクジラヒゲがよく発達し、小型かつ大量の餌を海水からこし取ります。
オキアミ類の他、マイワシ、カタクチイワシ、サンマなどを食べています。 全世界に広く分布していますが、外洋よりも沿岸海域や湾内で見られることが多い種です。羅臼沖では5~7月によく観察されます

シャチ
英名Killer whale
学名Orcinus orca
アイヌ語名レプンカムイ 「沖にいる神」
体長オス 9.8m、メス 8.5m、新生子 2.1~2.4m
体重オス 10t、メス 7.5t、新生子180kg

下アゴから腹側面、尾びれの下、目の上後方が白く、他は黒。また、背ビレの後ろには灰色の鞍型斑(サドルパッチ)があります。背ビレが特徴的で、雄はその高さが最大1.8 m、雌では0.9m。
大型のハクジラ(歯鯨)で、マッコウクジラなどよりもイルカ類に近縁。水中最速の哺乳類で、時速80 km以上を出せるとも言われています。
全世界の海に生息していますが、餌の豊富な冷たい海域に多い傾向があるようです。
魚だけでなく、他の海生哺乳類(アザラシ、トド、大型クジラなど)も食べます。
知床半島沿岸には定住はしていませんが、季節を問わず、時々群れが観察されています。特に4~6月に知床岬付近で出会う確率が高いようです。
なお知床の近くでは、北方領土のエトロフ島南部 (国後水道)で頻繁に群れが観察されています。

マッコウクジラ
英名Sperm whale
学名Physeter macrocephalus or Physeter catodon
アイヌ語名フンペ(= クジラ全般)
体長オス 15~18m、メス 11~12m、新生子3.5~4.5m
体重オス 45t(最大57t)、メス 20t

ハクジラ(歯鯨)類の中では最大のクジラ。頭が大きく、体長の1/4~1/3を占めています。この独特の体型からよくマンガなどのモデルになっています。噴気孔(鼻の穴)が頭の左前方にあるため、明瞭な噴気(ブロー)が左斜め前方に噴出されます。
全世界の海に分布していますが、一定期間、継続して観察できる場所は海外も含めて少なく、羅臼沖は貴重なマッコウ観察ポイントです。
深い海にすむイカ類が主食で、3000m以上の深海まで潜ることができると言われています。一度潜水すると、通常20分から40分は再浮上しません。深く潜る直前には尾びれを高々と海面上に挙げるため、見応えは十分です。
知床では、羅臼港発着の観光船で7月から9月に沖へ出れば、かなりの高確率で、何頭ものマッコウクジラに出会うことができます。

これらは一例です