羅臼岳・知床連山Q&A

羅臼岳登山について、皆様からよく質問される点について、知床羅臼ビジターセンター職員がお答えします!

不明点などは直接お電話でお問い合わせください。

羅臼岳登山の難易度は?
日本百名山のひとつ羅臼岳は、標高こそ1,661 m ですが、なんと言っても北海道の知床半島にそびえる山ですので、なめてかかると痛い目に遭います。本州の3,000 m 級の山に登るくらいの覚悟でのぞんで下さい。
せめて事前に登山地図を購入してから、本格的な計画を立てるようにして下さい。
登山シーズンは?
羅臼岳の本格的な登山シーズンは7月上旬からですが、7月は残雪が多く、特に初めての方にとってはルートが分かりにくいです。9月中旬ころまでは登ることができますが、このころになると日が短くなり、雪も降り始めますので注意が必要です。
登山ルートは?
羅臼岳には登山口が2つあります。
岩尾別(いわおべつ)登山口(斜里町側)と、羅臼温泉登山口(羅臼町側)です。
山の名前が「羅臼」岳なので、羅臼町側から登るのが一般的と誤解される方が意外と多いようです。しかし、実は斜里町側(岩尾別ルート)から登る方が一般的です。岩尾別ルートの方が、羅臼温泉ルートよりも登山道がしっかりしており、距離も短く、登山口から頂上までの標高差も小さいからです。羅臼温泉ルートは上級者向けのコースとなります。
岩尾別登山口は木下小屋周辺とホテル地の涯の脇の芝生部分(ホテル駐車場には駐車できません)に駐車することができます。また、羅臼温泉登山口は知床羅臼ビジターセンターの第2駐車場を利用してください。どちらも無料です。
羅臼岳の2つの登山口間を歩きたいのですが?
羅臼温泉から羅臼岳山頂を経て、岩尾別側へ下りることをおすすめします。下山時のルートがわかりやすく、膝などにかかる負担も少なくて済むからです。
羅臼側へ下りてくる逆コースの縦走は、初めての方には危険ですので、おすすめできません。後述のお花畑トラバースルート付近の雪渓で迷ったり、屏風岩の雪渓を下りすぎてサシルイ川上流へ迷い込むなど、遭難騒ぎ が毎年のように起きています。羅臼側ルートを歩いた経験のある方が一緒にいる時だけ、羅臼側へ下りてくるようにして下さい。
雪渓はありますか?
7月下旬まで(雪の多い年だと8月上旬まで)は、登山道を大きな雪渓が覆っている場所がいくつかあります。
岩尾別ルートでは、「大沢」の雪渓(写真A)。
羅臼温泉ルートでは、泊場の少し先(標高850m付近)にある沢右岸の雪壁(写真B)、「屏風岩」の雪渓(写真C)、
そして屏風岩雪渓を登りきった後に続く、岩清水直登ルートとお花畑トラバースルートの分岐点より上を覆う大雪渓(写真D)です。
なお、毎年7月上旬以降、写真Dの雪渓には迷い込み防止のため鉄ピンやロープの設置を行っております。

写真A:大沢の雪渓(2012年6月12日撮影)

写真B:泊場の先にある、沢右岸の雪の壁(2012年6月29日撮影)

写真C:屏風岩の雪渓(2012年6月29日撮影)

写真D:屏風岩の上に続く大雪渓(2010年6月29日撮影)

アイゼンは必要ですか?
特に羅臼側の雪渓では、7月いっぱいまでは本格的な10本-12本爪アイゼンやピッケルが無いと、不安があります。6本爪の軽アイゼンではカカトに爪がないため、急斜面では転びやすいです。万一滑落した場合、ピッケル無しではなかなか止まりません。スタッフの実体験です(汗)。
危険な箇所はありますか?
斜里側の大沢の雪渓の場合、登山者数が非常に多いため、山開き後しばらくすると雪が階段状になり、アイゼンなしでも登れてしまうことがあります。しかしそのようなルートはよく渋滞しますので、すれ違い時に脇へよけたり、渋滞を避けて人があまり歩いていない場所(雪渓の端の方)を歩く時に滑落しないよう、十分な注意が必要です。
雪渓の中にある大きな岩の近くは、岩の周りだけ雪がとけていて、近づきすぎると雪を踏み抜いて穴に落ちることがあります。そのような転落や滑落、自分の体力を過信した結果の消耗などにより、大沢の雪渓からヘリコプターで運ばれる方がいます。
アイゼン持ってないんですけど…
アイゼンが無いからと言って、正規ルートを覆っている雪渓を大きくよけて、土の露出している場所を歩くのはやめて下さい。踏圧で植生がなくなり裸地化してしまうと、なかなか元通りになりません。準備をしっかりしましょう。
トイレはありますか?
トイレは各登山口にしかありません。事前にトイレを済ませてから登り始めて下さい。ここ数年、水場やキャンプ指定地周辺で糞尿のニオイや使用済みティッシュの放置が目立ち、問題となっています。ティッシュはなかなか分解されず、長期間山の美観を台なしにします! ティッシュは必ず持ち帰りましょう。また携帯トイレを使用して、糞尿の持ち帰り推進にご協力ください。携帯トイレは、知床自然センターや知床羅臼ビジターセンターなどで販売しています。また、2012年度より銀冷水に携帯トイレブースが設置されています。
どれくらい時間がかかりますか?
羅臼岳のみに登る場合は、基本的に各登山口からの日帰り登山です。
休憩時間も含めると、岩尾別ルート往復で8時間以上、羅臼温泉ルート往復では11時間以上の行動時間を目安としてください。
お盆以降だと雪渓歩きは無くなりますが、日が短くなって昼間の時間が13時間以下になります。早めの登山開始と、早めの下山が重要です。
携帯電話は通じますか?
携帯電話は、頂上付近や屏風岩の上付近では比較的通じます。ただし携帯電話会社によっては通じにくいこともありますので、事前に携帯会社などに通話可能エリアをご確認ください。
ヒグマは出ますか?
羅臼岳登山道には、よくヒグマが出てきます。
バッタリ遭遇するのが一番危険ですので、鈴を鳴らす、頻繁に声を出すなどのヒグマ対策を十分にして下さい。もし出会ってしまった場合、背中を見せて走って逃げるのは自殺行為です。
熊撃退スプレーの携行もおすすめです。万一の時に有効な反撃手段があるというだけで、安心感が全然違います。そのため、実際にヒグマと出会っても落ち着いて行動することができ、結果としてスプレーを使うような危険な状況にならないで済むことになります。ただし腰のベルトの所など、すぐに抜ける場所に着けておきましょう。ザックの中にしまっておいたのでは、意味がありません。
熊撃退スプレーは高価ですが、当センターの他、知床自然センターなどでレンタル(1000 円 / 日)しています。ぜひご利用ください。
クマ鈴やスプレー以外に持っていくべきものは?
下山前に日が暮れた時のために、ヘッドランプも忘れずに持って行きましょう。人間を見てもまったく警戒しない・逃げようとしないヒグマが長時間登山道の上に居座り、帰り道をふさがれたパーティーが、夜にやっと下山できた、というような事例も近年発生しています。
山頂付近に山小屋はありますか?
羅臼岳には避難小屋がありません。山の上で宿泊する場合は、キャンプ指定地でのテント泊です。ヒグマがたくさんいる場所での野営になるため、食料は常設されているフードロッカー内に保管し、テント内には絶対に置かないようにして下さい。もし知床のヒグマがテントやザックを食料のありかとして学習してしまうと、過去に他の山域で起きたような惨劇の原因になりかねません。
ほかに参考にできる情報源は?
下記等参考にしてください。
<羅臼岳登山の前に準備すべき地図などの例>
・山と高原地図 利尻・羅臼 斜里・阿寒  昭文社 945円
・国土地理院 2万5千分の1地形図 羅臼、知床五湖、硫黄山
・最新版 北海道夏山ガイド<6> 道東・道北・増毛の山々 北海道新聞社 (単行本) 2415円
・羅臼岳・硫黄山自然観察ガイド 知床サイト (単行本) 1200円